かつては、婚姻関係のない日本人父と外国人母の間に生まれた子の国籍は、父の認知を受けても母の国籍となりますがその後父と母が婚姻すれば(婚姻準正)、準正による国籍取得届を届け出ることにより、日本国籍を取得することができるとされていました。
しかし、最高裁平成20年6月4日大法廷判決は、父と母が婚姻することを要件とした国籍法3条1項の規定は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反するとしました。
そして、日本人父から認知された子は、同項の他の要件が満たされたときは、日本国籍を取得するとしました。
この判決を受けて法務省は、国籍法の改正作業を始める方針を固めました。
さらに、国籍法が改正される前でも国籍を認める方向で、上記最高裁判決と同じような届出があった場合は、各法務局は、要求を満たさないとして無効とせず預かって審査するよう通知を出しました。
平成21年1月1日より施行されることになりました。
偽装の認知がされる危険が多いため罰則規定が同法21条1項に新設されました。附則に重要な経過措置と特例が規定されていますが、きわめて重要な規定ですので改正後の条文を示すことに致します。
〔法務大臣への国籍取得の届出〕
届 出 人 | 日本国籍を取得しようとする子(日本人父と外国人母の婚姻外で生まれ、後に父からの |
届 出 先 | 子の本籍地および届出人の所在地の法務局またはその所在地の日本大使館 |
届 出 書 類 | 国籍取得届 |
添付書類等 | 1 認知した父(または母)の出生時からの戸(除)籍謄本または全部事項証明書 2 国籍を取得しようとする者の出生を証する書面(出生届記載事項証明書または出生証明書 および訳文、あれば母子手帳等) 3 認知に至った経緯等を記載した父母の申述書 4 母が国籍を取得しようとする者を懐胎した時期に係る父母の渡航履歴を証する書面 5 その他実親子関係を認めるに足りる資料 6 本人確認書面 7 以上の書類中、氏名が相違する場合は、同一人であることを証する書面 8 親権の審判等の裁判書があるときは、当該確定証明書 |
〔市区町村長への国籍取得の届出〕
届 出 人 | 国籍取得者本人または代理人 |
届 出 先 | 国籍を取得した子の本籍地および届出人の所在地の市区町村役場またはその所在地の 日本大使館等 |
届 出 書 類 | 国籍取得届 |
添付書類等 | 1 国籍取得証明書 2 国籍取得前の身分事項を証すべき書面 |
法律上のポイント
改正された国籍法3条は、「父又は母が認知した子で20歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得する」と規定しています。
これにより婚姻外の子でも、日本人父から認知を受ければ、日本国籍を取得することができることになりました。
このことは、胎児認知をされない限り日本国籍を取得が取得できないとされている規定に適用上変更を迫ることになります。
その他、日本人の養育で生母が日本での在留資格の取得や在留特別の許可を得る等、各所に影響が出ることが予想されます。
国籍取得の条件は、次のとおりとなります。
① 父または母に認知された子であること
母の認知は出産で足りますので、日本人父の認知を受ければよいことになります。
② 20歳未満であること
届出の時に20歳未満でないと受理されません。20歳未満としたのは親子が同一国籍であることは、子が未成年の時期が望ましいだけでなく、20歳を超えると、すでに外国人としての生活を始めていると考えられるからです。
③ 出生の時から日本国民でなかったこと
出生によって日本国籍を取得した者は除かれますが、それは、血統主義の補完をするという目的に合わないからです。
④ 父が子の出生の時に日本国民であったこと
父の日本国籍の取得理由は問われず、重国籍者でも帰化者でもかまいません。
⑤ 父が現に(死亡している場合はそのとき)日本国民であること
「現に」とは、届出のときという意味です。父は、子の出生のときと届出のときの両時に日本国民でなければなりません。
手続のポイント
この場合に、日本国籍を取得して重国籍となったときは、22歳に達するまでに国籍選択をしなくてはなりません。
書式のポイント
① 国籍取得届に書かれている注意事項をよく読んで準備をしてください。
② 法定代理人は、親権者のとき共同親権ですので父母の署名押印が必要でしたが、平成21年1月1日施行の国籍法施行規則によって署名のみで足りることになりました。