届 出 人 | 日本国籍を離脱する青年(本人が15歳未満のときは法定代理人) |
届 出 先 | 本人の本籍地および届出人の所在地の法務局またはその所在地の日本大使館等 |
届 出 書 類 | 国籍離脱届 |
添付書類等 | 1 戸籍謄本 2 外国の国籍表明書 |
法律上のポイント
1 憲法と国籍法
国籍法13条は、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができ、この届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う」としていますが、これは憲法22条の「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」を受けたものです。
この日本の国籍離脱の制度は、個人の意思のみによって認められるという徹底したものです。
そして、国籍離脱の条件も、離脱すべき日本国籍を有し、さらに外国国籍もあり、かつ離脱の意思があればそれでよいのです。
離脱の意思、すなわち意思能力さえあればよく、行為能力までは要求されていません。
つまり、国籍離脱の条件は、次のとおりとなります。
① 日本国籍を有すること
② 外国国籍を有すること
③ 届出の意思能力を有すること
本例では、すべての条件を満たしているようです。
2 国籍離脱の条件の再検討
このように単純にみえる日本国籍離脱ですが、重国籍者と思っていてもすでに日本国籍のない者であることがあるため、実務上の問題点もあります。例えば、ブラジル国籍の取得が帰化等の「自己の志望」によるときは日本国籍を喪失し、アメリカ(生地主義国)で生まれ、日本国籍の留保届をしていないとすると日本国籍を喪失している等のことがあるからです。
さらに、外国国籍を有している国が、日本が承認している国でなければならないかどうかの問題もあります。
裁判例によると承認国に限るとされ、実務もそのようにしているため、朝鮮民主主義人民共和国と日本の国籍を有する者または中華民国と日本の国籍を有する者は、日本国籍の離脱はできないことになります。
国籍離脱届に国籍離脱の条件を備えていることを証する公的資料として中華民国の護照(旅券)や戸籍登録簿または朝鮮民主主義人民共和国の国籍証明書を添付しても届出の受理はされません。
これらの我が国の未承認国の人は、事実上の重国籍者にすぎないからです。
3 国籍離脱の手続
国籍離脱の手続は、届出による国籍取得条件と同様であり、国籍法施行規則に規定されています。国籍離脱届は、国籍選択届と同一で、本人が15歳未満の場合は法定代理人が行います。
なお、届出に瑕疵がなければ法務局または地方法務局は、届出人にその旨を通知し、その者の本籍地の市区町村長に国籍消失の報告をします。本籍地の市区町村長は、この報告に基づいて戸籍の消除を行うのです。
4 国籍離脱の効果と努力
国籍離脱の効果は、本人についてのみ生じて、親族にはその効力が及ぶことはありません。
しかも、効力は届出のとき生じるとされているので、取下げや撤回はできません。
なお、法務大臣は、適法な届出を受理するのみで、帰化のときのように官報の告示等の行為は要しません。
手続のポイント
国籍離脱という重要なことですので、直接本人の意思を確認する必要性から届人本人が出頭しなくてはなりません。
15歳未満で、法定代理人によるときは、資格をきちんと記入することを忘れないようにすることが必要です。
書式のポイント
平成21年1月1日施行の国籍法施行規則によって、かつて署名押印が要求されていましたが署名のみで足りることになりました。
国籍離脱届は、国籍喪失事由の1つです。国籍喪失届の問題も出るのですが、この場合、法務省民事局長または法務局もしくは地方法務局長から国籍の喪失報告がされるので個人として国籍喪失届をする必要はありません。