届 出 人 | 父または母 |
届 出 先 | 日本人男性の本籍地の市区町村役場またはその所在地の日本大使館等 |
届 出 書 類 | 出生届(国籍留保届という特別の様式はなくここに日本国籍を留保すると印刷がされています) |
添付書類等 | なし |
法律上のポイント
1 国籍留保制度
国籍留保制度は、「出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う」と規定されていることに依拠しています。この制度の機能は、出生によって日本と外国の重国籍となった国外出生のすべての子供を対象とすることによって重国籍の防止をしています。この制度は、旧国籍法にも規定されていましたが、生地主義国で出生した子についてのみ適用されていたものを、血統主義国で出生した子についても適用されるように拡張したものです。ただし、外交特権のある日本政府職員の子供は適用除外となります。
この制度は、
①国籍留保の意思表示をしないと日本国籍を失うことにより、外国に定住する日本人の子孫の重国籍をなくすという機能と日本との関係が薄くなった日本国籍保有者の発生の防止機能、
②国籍留保届をしない者を戸籍に登載しないことにより、日本人であることを明らかにする戸籍制度の維持機能があるといわれます。
2 手続要件
次の2条件をともに充たすときは国籍留保をしなくてはなりません。
① 日本国外で出生したとき
② 日本国籍のほかに外国国籍も有するとき
日本国外で生まれ、出生によって外国籍となることは、生地主義のみならず血統主義によって外国籍となる場合があるため、一般的には、子供を外国で出産したら、国籍留保届が必要がどうかに注意する必要があります。もっとも、在外公館で配布している用紙には、あらかじめ日本国籍を留保するとの文字が印刷されていますので、届出人がサインと押印をすれば足ります。
国籍留保届出人は、嫡出子について父または母、非嫡出子については母、子の出生前に父母が離婚しているときは母、またはその法定代理人であり、出生届と同時にすることになっていますが、それは、国籍留保届のない出生届は、届出期間経過後は、外国にいる外国人の出生届となるため、日本国が受理する性質のものでないからです。
なお、届出期間は出生のときより3か月以内です。
この期間は、在外公館に出頭して口頭で行う場合には、書面が在外公館に到達するまでの期間を指します。
天災その他届出をすることができないときは、届出をすることができるようになってから14日以内に届出をすればよいことになっています。
ここで、「届出人の責に帰すことのできない事情」とは、
①交通、郵便等の便が極めて悪く、治安状態も良くない場合、
②出生証明書の発給が遅れた場合、
③日本の在外公館の所在地と遠隔地に住み、交通の便の悪い場合、
④届出人が現地に来て日が浅く土地の事情も分からず、言語も不自由の場合等です。
一方、法を知らなかった場合などは、それにあたらないとされています。
3 三重国籍者の戸籍
国籍留保の意思表示をすると、戸籍にその旨記載されます。これによって重国籍者が出ることになりますが、これについては、生まれた子供の意思によって国籍を選択するという国籍選択の制度によって重国籍が解消されるように図られています。
4 不届出の効果
国籍留保の届出をしないと、出生の時にさかのぼって日本国籍を失うことになります。
結果的に戸籍は作成されないため、出生の事実や国籍喪失の記載もなくなります。
この制度により国籍喪失をした者は、20歳未満で日本に住所を有するときは、日本国籍を再取得できますが、これは一種の救済法です。
さらに、出生によって日本国籍を有していたからこそ喪失するのであり、20歳を過ぎて日本に帰化しようとするときは「日本の国籍を失った者」として簡易帰化することもできます。
手続のポイント
戸籍実務では、日本国籍を留保すると書かれていない出生届が送付されたときは、追完をさせるようにしています。
さらに何らかの事情で追完のできないときは、出生届自体で日本国籍を留保するとの意思表示と解して処理をしています。
子の届出によって、出生児本人の戸籍に出生事項の一部として国籍留保届がされたことが記載されます。
書式のポイント
① 出生届に記載されている記入上の注意をよく読んでください。
② 出生した日から3か月を過ぎても出生届は受け付けてもらうことは可能ですが、出生で重国籍となった子について日本国籍を留保するときは3か月以内に届けないと受け付けられないことになるので注意すべきです。